※現代パラレル物です。それを了承する方、読んでくださいです。如月深雪拝※RamdomSchool CleaningTime終業後の、掃除の時間だった。 「・・・・・。」 教室前の廊下でモップ片手に藤原彰子は立ち往生していた。 他のクラスの女子に囲まれていたからである。 しかも最初は2人だったのが7人になった。 さすがにのらりくらり返していたのではダメそうな人数である。 ため息をついて、どうしたものかと思案した。 野球部に格好いい先輩がいるのは知っている。昌浩のクラスメイトだからだ。 サードを守っていて、その硬派なイメージが女子の人気を集めているようだった。・・・が、その彼が迷惑にも私がタイプだと言ったらしい。 どこが硬派?と思うが、それを彼女達に話しても通じないだろう。 マネージャーを筆頭に真相を彰子に確かめるように聞く。 「本当は安倍先輩じゃなくて、彼だったりはしないの。」 「・・・・。」 くんと彰子の動きが止まる。その言葉は彰子のカンに障るには充分だった。 「・・・・どうして?。」 ややあっておもむろに顔を上げた。 長い髪がさらさらと肩を流れ落ちる。 大きな目が真っ直ぐに相手に据えられた。 「どうしてそう思うの?。」 「・・どうしてって・・・。」 視線を反らされる。結構人というものはあまり目を見て話さないというのを感じるのはこういう時だ。 女の子達はざわつくだけで返答はなかった。 そろそろ野次馬が出来始めていて、終わらせようと思った。 「その人がどういうつもりか知らないけれど、私には迷惑極まりないわ。」 あきらかに彼女達の表情がむっとした。 この言い草は彼女達の価値観が私に否定されるということだった。 「じゃあ、そう意志表示してきてよ。」 「うん。あなたから伝えておいて。」 肩をすくめ、彰子はにっこりと微笑んだ。 掃除終了のチャイムが鳴る。 二の句をつげず怯んでしまった女の子達の口実になった。 「あ・・私たち、帰るね。」 後から加勢した5人の子達が踵を返す。 マネージャーの2人はまだ焦れているようだった。 「・・・・。」 引き返した女の子達が足を止めた。 一様にぎょっとしているので、彰子は振り向いた。 窓際の壁に寄り掛かって腕を組んでいる昌浩がいた。 剣呑に目を細めこちらを見ている。 2人のマネージャーは「いつの間に」とか「なんでいるの」という顔をした。 わざわざ掃除の時間を選んできたのに。 彼女達は完全に勢いを殺がれたようだった。 足早に昌浩の横を立ち去る。 「・・・。」 昌浩は彰子の傍に足を向けた。 残った2人に尋ねる。 「もう、いい?。」 連絡用のプリントを職員室へ取りに行くその通りすがりだが、いかにも用があるように呟く。 「もう済んだから、いいです。」 2人も去った。 彰子が背中でぼそりと呟いた。 「昌浩、青龍が移ってる。」 「・・・。・・彰子。」 彼女達が教室に入るのを見届けていた昌浩は、彰子に的確にそう指摘されてぐるりと向き直った。 「そういう心境なんだから、しょうがないだろ。」 いうに事欠いてそれかいと、昌浩は唸るのだった。 ホームルーム前。 「つい傍観してしまいました。ごめん。」 「このあといじめられたらかばってね。」 「うん。了解。」 向きを変えて椅子に座り彰子は後ろの席の友人とさっきのことを話す。 友人がじっと見つめてくるので彰子は見返すと、彼女は机に頬肘をついた。 「7対1で負けてないんだもん。思わずこっちまで怯んでしまったもの。」 「そんなに怖かった?。」 「睨んでるわけじゃないから怖いとは違うかな。なにかな。普段から貴女に見られるとドキドキするけど、その倍増。」 心臓がひゅっと上がるよ、と苦笑いした。 「普通にしてるけど。」 「いいの。いいの。ドキドキさせてよ。気にしないで。」 友人は肩を竦めて二の句を次いだ。 「安倍先輩は、彰子が怒ったら怯む?。」 「怯んでくれない。」 「さっきみたいにしても?。」 「あのくらいじゃ・・ね。昌浩、年上の家族多いから。」 特に、十二神将の彼らが。 彰子は無難な言い回しをした。 「へー。」 って、見つめ合ったりしてるわけだ、と思って口にしようとした時、先生が入ってきた。 「・・・根も葉もないんだから、ま、あんまり気にしないでね。」 ぽくぽくと肩を叩いて優しい友人はそう言ってくれた。 先生が連絡事項を伝えて、日直による起立と一礼をした。 教室が騒がしくなる。その喧噪の中、昌浩は野球部の彼を突っついて引きとめる。 一連の話を聞いて、その感想を彼は呟いた。 「・・・タイミング良くおまえも傍にいるよな。ほんと。」 半ば感心、半ば呆れといったふうだ。 「たまたまだよ。」 「そうかなぁ。でもそうやって絶対安倍が守るから、平気だと思ったから言えたんだけどな。」 「・・・・。」 自分を引き合いに出されて昌浩は訝しげに首を傾げた。 「はい?。」 「とぼけんなよ。直感かつ速攻で彼女の傍にいるくせに。」 「・・・・。」 「だから心配ないと踏んだわけで。俺、女子より野球と学業に専念したいからさー。そう言っておけば女子を追っ払えると踏んだわけで。かつ、誰にも迷惑かかんない気がしたわけで。」 「大迷惑だ。」 「あ、藤原さんがタイプなのは本当だけど。」 にこやかに言うが、やおらまじめな顔になった。 「・・・悪かったな。」 「悪いと思うならするなよな。」 「後悔後先立たず。女子ってわかんねー。直球で興味ないって言えば、どうしてってくるし、やんわりと答えれば、八つ当たりするし。」 「それは言えてるけどさ。」 「おまえはいいの。他の女なんざ理解しなくたって。」 目の端に藤原彰子が廊下にいるのが見えた。 彼はカバンを持って、彼女を指差して昌浩に呟いた。 「ほら、待ってるぞ。悪かったって伝えておいて。直で言うと角立つから。」 「わかった。」 END [04/11/6] #小路Novelに戻る# −Comment− 絵が、描けたらなーな文章を再び。 さて、いろいろ新刊予告、雑誌予告がされていてうずうずと12月が待ち遠しくなってきた。 まだ11月上旬だー。 来月はちょっとは自由度があるからゆっくり読めるかも。『冥夜〜』はちょっぱや読みだったから。 やっぱり本は喫茶店(私はスターバックス)に入って、コーヒーを飲みながらゆっくり読むべきだ。ああ、理想のスタイル(ほんのり遠い目)。 |