喜劇






 ――燃え尽きると知りながらも誰かに気づいてほしかった


 御簾の内側で章子は、高欄の向こうのかがり火を眺めた。
 庭には舞台が設けられ芸能が披露されている。
 寸劇に、笑い声が上がった。
「中宮様」
「中宮様、おかげんはいかがですか?」
 女房達が気づかいの言葉をかけてくれる。
「・・・・・。」
 ついこの間まで臥せりがちだったのだ。
 そして問題は彼のおかげで全て解決したのを知っている。
 そう・・・・全容をも知っていた。
「・・・平気よ。皆様も楽しんで。」
 このところの中宮の回復振りに女房達は心痛から解放されていた。
 余裕がうまれ、皆本領を発揮して、優雅になってきている。
「お気づかいありがとうございます。」
 平身頭底して、女房は下がっていった。
「・・・。」
 脇息にもたれて、自分が確かに存在しているのを感じる。



 私の運命がはぜている―――そう彼を抜きにして。



 ――あなたが気付かせた恋が、あなたなしで育っていく

 たわむれ、と言った。
 たわむれ、などではなかった、と、

 ――悲しい花つける前に、小さな芽を摘んでほしい


 本当に、たわむれなどではなかった。
 それは嘘偽りない。
 だけど、

 彼に、
 何を望み、
 何を願った。

 彼に、
 何をして、
 何を出来た。

 それがわからなかったから喜劇になった。
 自ら演じた、滑稽さを、


 ――それでも夜が優しいのは、見て見ぬ振りをしてくれるから


 だけど、彼は笑わなかった。







END
[05/12/31]

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−Comment−

詩:
ポルノグラフティ
「ジョバイロ」
紅白見てました。それで浮かんだお話。