※現代パラレル物です。それを了承する方、読んでくださいです。如月深雪拝※Landing帰りを急ぐ 天后は新宿の街を振り返りながら、通りを歩いていた。 イルミネーションの飾りは、暖かな空間を作り出して、訪れたクリスマスの夜を彩る。 本当は直接向かっても良かったけれど、なんとなく面白かったので、手前で空間移動をやめて降り立った。 今日は家族が皆集まれるので青龍も早く帰ってくるようにという既に伝えた当主の指示を彼に確実に実行してもらうため、天后が迎えに来たのだ。 でもまだ終業の5時45分には15分早い。 主だった黄色の電飾とクリスマスカラーの赤と緑。 白いツリーに青やピンクの電飾を施したクールなライトアップ。 今は5時半だが、一昨日が冬至なだけあって既に真っ暗で、イルミネーションが映えた。 普段ビジネスマンだけの空間が、観光やデートなど物見遊山な人達で溢れていた。 自分はそちらの方の部類かなと思いつつ、もう一度格好を周りと比べてみる。 グレイ基調のロングスカート。それから白いコート。 たぶん普通だろう。 待ち合わせの彼には普通で来いと言われている。 程なく歩いて道長氏所有のビルについた。 ロビーに待ち合わせのツリーが見えた。 青龍はロビーを見渡せる2階通路を歩いていた。 喫茶店が奥に入っていて、道長がそこで打ち合わせをしていたからだ。 4時に訪問してきた客は回りくどく時間がかかりそうだった。 こちらには先約があり、そちらの方が重要だった。 晴明もわざわざ天后まで寄越してくる辺り、自分がいかに忙しい身の上かわかる。予定も変わりやすい。 天后を伴えば移動時間が無くなり、そこで時間の短縮が図れた。 けれど思ったよりもさっさと終わった。 ずーっと圧力を掛けていたのは否めないが、さっさと終えられて道長も満足げだった。 常務室へ直通のエレベーターまで送って、今日の仕事は終わりだった。 待ち合わせの時間まであと15分。 ロビーまでの階段を降り掛けて、道長の秘書が肩を叩いてきた。 「お疲れ様。」 「・・・・。」 女で秘書の二人と社の男の営業が一人。後から追いかけてきた。 「おまえのおかげで早く片付いたよ。」 助かったと暗に含んでいた。 よく道長に頼まれて営業所から借り出される彼は、よく顔を合わせる。 「・・・別に。何もしていない。」 「そういうと思ったが・・。・・どうだ。一緒に飯食いに行かないか?。」 「ミシュランの格付けのところなんです。決まる前に予約を入れてあったんです。」 「よかったら来ませんか?。」 「先約がある。帰らせてもらう。」 青龍は歩き出す。 「道長氏も来られますよ。」 「・・・・。」 訝しげ道長が上がっていたエレベータを見た。 だから、その娘が今日、安倍の家に遊びに来ているのだ。 「SPなら。来なきゃ、でしょ。」 秘書が軽口で言った。 「・・・・予定にない。何かあったら道長が言うだろう。」 そう言って、階段を降りて行ってしまう。 途中まで彼らがついてくる。 待ち合わせまで10分前。 来ていなかったら、もう少し連中と付き合うことになる・・と思ったが、来ていた。 「あ。」 天后が振り向く。 安堵で嬉々とした表情は慣れない街での待ち合わせでちゃんと会えたからだ。 ・・・そう、 天后も生真面目一本で、待ち合わせには早く来る。 そこは気が合うところだろう。 秘書達は階段の一番下で立ち止まってしまった。 「・・・。」 一様に目を丸くして。 秘書達は二の句を告げない。 かろうじて社の営業が呟く。 「ま、・・また明日なー。」 ひらひらと手を振った。 「・・。」 後ろでに手を振ると、すたすた歩き出す。 彼女が横についていく。 でも、少しだけ後ろ気味についていく姿が、なんだか微笑ましかった。 END [07/12/24] #小路Novelに戻る# −Comment− ミシュランうんぬんを書こうかなと。 |