※現代パラレル物です。それを了承する方、読んでくださいです。如月深雪拝※



ChinaTea






 この二人がセットだと大概『いる』のである。
 頼通は目を剥いてリビングを見渡し確かめる。
 余分な空白が無いかどうかを。
「・・・頼通。おまえ、俺を何だと思ってるんだ。」
 昌浩はそんな頼通を半眼で眺めやった。
 が、頼通はそれに対し速攻で反論する。
「そんなこと言って、僕をさんざん脅かしたのはどこのどいつだっ。」
 しかも親に隠れてっ。
「さあ。」
 当の昌浩はしれっとしたもので、中国茶をすする。
「さあじゃない。今、いるのっ?、いないのっ?。どっちだっ。」
「いないよ。たぶん。」
「たぶんとか言うなっ。」
 姉の彰子が苦笑いして助け舟を出す。
「いないわ。大丈夫。昌浩はお父さんのお土産を取りに来たの。」
「・・・・そう言えば・・。」
 自分用だけでなく昌浩の分の凧も買ってきたとか言っていた気がする。
 それでその凧をどこであげればいいんだと思った気がする。
「頼通。露樹のおばさまがパウンドケーキを焼いてくれたの。一緒に食べましょ。手を洗って来て。」
「・・・うん・・・じゃなかった。はい。」
 昌浩だったら適当な場所を知ってるんだろう、とか思った。
 でもそれを口に出すのは物知らずな気がする。
 頼通はトーンダウンして大人しく姉の言うことに従った。
「・・・・。」
 部屋に戻り鞄を置いた。
 頼通は目を伏せる。
 同級生は大人しい子ばかりだ。凧揚げに付き合ってくれるか微妙にわからない。
 ガキっぽい気もする。
 チェッと舌を打つ。
「舌を打つと、合図と思ってお化けが来るぞ。」
 頼通の背筋がぎくりと伸びる。
 ノックもしないで、ドアに寄りかかっている昌浩である。
 我知らず反発心が芽生えてがおっと言い返す。
「お化けなんかいるかっ。」
「いるいるいるいる。いますとも。見たことあるだろ。」
「無いっ。」
 誰か達のせいであるけどっ。
「なら怖がることないだろうに。」
 睨んでも睨んでも昌浩は飄々としている。
「・・・・・。」
 どうしてこう癇に障るのか。
 答えは一つ。
「(お姉ちゃんはこいつのどこがいいんだっ。)」
 心の中で盛大に叫ぶ。
 声にすると認めてしまうことになるので言わないが。
 頼通の心を知らず昌浩は本棚の上を指差した。
「おまえ用の凧もあるんだろ。柄がいい方おまえ持ってたら?。」
「・・・わかった。」
 首肯を返すと、昌浩はひらひらと手を振ってリビングに戻っていった。
 その背を見送りつつ、相変わらずだ、と頼通は盛大に溜息をついた。
「(・・・人の気も知らないでさ。)」
 見えなくても何も知らないわけではない。
「・・・。」
 怖がることない、と昌浩は言う。
 そうなのだ。
 呑気にお茶しているけれど、あれでいて昌浩は命がけの仕事をしている。
 そう怖いことならなら沢山ある。
 最近笑えないことが多すぎて、自分はだんだんひねてくるのがわかるのに。
 でも昌浩は昔からあのままで。
 胸に凝ったものを掻っ攫い、毒気を抜いて帰っていく。
 たまにしか来ないけれど自分の中の存在感は小さくはなかった。
 頼通は本棚の上を探して、まだ封の切られていない凧を手に取る。
「(お姉ちゃんもかなぁ・・あーあ・・。)」
 ほりほりと頬を掻いて弟心は複雑で、うなりつつも頼通は洗面所に行きリビングに戻る。
 昌浩が凧を盛大にリビングに広げていた。
 九連凧だからそれなりの長さのある凧だ。
 人の家のフローリングに構わずに広げているのであきれを通り越して感心する。
「どこで揚げるの。」
 思わず口についてしまった。
「多摩川の河川敷。」
「だいぶ遠いと思うけど。」
「自転車ならすぐだと思うけど。」
 こともなげに言う。グローバルとういか、アバウトである。
「頼通。おまえのは?。」
 言われたので、封を切って凧を取り出した。
 昌浩の凧と絡まないように広げていく。
 竜と鳳凰のテーマは同じだが、配色が自分が赤系に対して昌浩のはマゼンタ系で、施された模様もだいぶ違う。
 フローリングに座り込んで頼通は吟味をしだす。
 傍ら彰子が微笑ましそうに眺めていた。
 お手伝いさんがパウンドケーキを切り分けて持ってきてくれる。
 ドライフルーツがどっさり入っているので、中国茶のお茶請けに最適だ。
「少し暑いから冷茶にしてるものを出してきましょうか。」
「あ、お願いします。」
 彰子がお手伝いさんにお願いする。
 かたんと彼女が出ていって、代わりに昌浩が慣れた様子で手伝って、小皿を応接テーブルに適当に並べていく。
 その時だ。昌浩の視線が動き、頼通も何気に追ってしまう。
 何もない窓にぎくりとする。頼通はあわてて目をそらした。
 からりと窓が開いた。
「(・・・・見ない見ない。)」
 頼通は気のせいだと思って、一生懸命凧を凝視する。
 でも昌浩が目で追っている。
「・・・(怒)。」
 追うなよと思った。
 そして、姉が目を瞬かせた。
「あ、もっくん。」
 目眩で頼通の視界がぐらりと傾ぐ。
 自分のそんな様子に、姉は不用意な言葉を発したことに気づいて、あ、と口元を押さえた。
「・・・・だから、誰だって?。」
 頼通の唸るような声が地を這った。




[07/6/1]

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−Comment−

頼通の性格がよくわからないので、たぶん自分が受けた仕打ちを昌浩はまんま頼通にするでしょうということで。

さてさてさてっ。
ネタばれですっ。
ぶっちゃけですっ。


めぐる時、夢幻の如く>
筱がね・・死んじゃうのは、ううTTっとくるんだけど、これしかない。
んで、篁が鬼になったのは筱と同じように散るためなんじゃないかなとか。
でなけりゃ篁が鬼になるようなことはないと思う。

ほか感想。
楓のお兄ちゃんしてる融がいいです。うっちゃれ手紙。
ばけらったになったので篁が他の巻よりだいぶしゃべりません。だから他の登場人物がしゃべっています。
晴明の言葉遣いが大層です。
昌浩を融に重ねたところがたまりません。おいしいシーンです。
ダースベーダーは篁を見習おう。全てを失わなかった理由。
破幻なもの。
夢幻なもの。
散る命があれば生じる命があると思います。