※現代パラレル物です。それを了承する方、読んでくださいです。如月深雪拝※Lost City −1− もうすぐ三学期が終わる。
それなのに、この寒さったらない。 「さむ。」 昌浩は学校の昇降口にいた。他生徒が下校していく中で彰子を待っている。 マフラーのウールの重なりに頬をうずめやった。 「昌浩。」 呼ばれたので振り返る。 『彰子』と呼ぼうとして昌浩は軽く目を見張った。 後ろに何人かの上級生がいたからだ。高等部も混じっている。 当然男ばかりだ。 「・・・延べ何人?。」 今は3人だが、一応伺っておく。 「・・・6人。」 「はー・・さすが彰子。」 「怒るわよ。」 「ごめんなさい。・・・で、なんなのさ?。」 「・・・・・。」 彰子は白い封筒を出して見せた。 「招待状?。」 昌浩の問いに彰子は首肯する。 彰子は何度かこの手の誘いを金持ちの上級生から受けることがある。 つまりは社交界という代物だが、誘われるたびに彼女はお断りをしている。 あんまりつまびらかにお嬢様していると健全な友人関係に軋轢が生じるし、父親の会社経営の力関係に迷惑をかけかねないからだ。 でも断っていなさそうなところを見ると行きたいのだろう。 昌浩は中を見る。 殊勲賞をもらった人のお祝いの席のようだった。場所は京都。 特別何かやばそうな会ではなさそうだ。気はとても遣うだろうが。 「行きたいの?。」 「・・うん。」 「なんか特別なの?。」 昌浩の直球な質問に彰子は逆に言いにくそうだ。 「・・楓様が来るらしいの。」 「・・かえでさま?。」 様付けですか?、というふうに昌浩は聞き返した。 彰子はうんと頷く。 「とても綺麗な人らしいの。清楚で可憐で。でも滅多に外に出ないから話にしか聞かなくて。学校も超お嬢様学校に行ってる。」 「彰子も相当お嬢様だと思うけど。彰子はその人が見たいの?。」 こくりと彰子は頷いた。 「うん・・・。招待されたし・・いつもだったら気を遣うから遠慮するんだけど。」 「ふーん。」 「受章者は身内らしいの。だから参加するそうなの。」 「へー・・。んじゃ、なおのこと行ったらいいじゃん。」 「・・・・。」 ちらと上目遣いに昌浩を見る。 「昌浩。来れる?。」 「・・・・。えええええ。」 ぎょっとして一歩後ろに足を引く。 「なんで。」 「・・パートナーいないと変だから。」 「頼通じゃダメなのか?。」 言ったが最後、ジト目で睨まれる。 ダメだそうだ。 昌浩は頭を抱える。 「え、と、ちょっと待って。京都だろ。そんでもって授章・・・。」 ちょっと考える。 「京都で、ってだけでも・・。」 ちょっと考えただけでも憂鬱である。 「・・・・。」 彰子がお願いっというふうに小さく手を合わせる。 「・・・・。」 何事かと下校中のクラスメイトが立ち止まっていた。 ぴょんぴょんと軽快に雑鬼達も騒ぎを聞きつけて飛んでくる。 「なになになに?。」 《お!、なんだ、なんだ。》 こっちは知らないがあっちは知っているだろう生徒と学校の雑鬼の好奇を下駄箱の陰から感じる。 そして何より後ろの上級生。明らかに友好的でない態度だった。 これは引き下がるところではない。 「・・わかりました。行きます。」 観念して、挙手した。 二つ返事とか、安請け合いとかそういう言葉がよぎったけれど空耳だ。 環視から歓声が上がった。面白くなさそうに上級生達も帰っていく。 昇降口の空気が動き出す。 「行くけど、頼むから期待するなよ。マナーとか。」 「・・・・・昌浩、結構大丈夫だもん。じゃなかったら誘わない。」 「・・善処します。」 そう言って、もう一度ひらっと招待状を眺める。 「あとでおじさんづてに詳しくつめてもらえる?。」 「うん。わかった・・・ありがと。昌浩。」 「どういたしまして。」 戻った笑顔に、昌浩は肩を竦めた。 [07/7/10] #小路Novelに戻る# #Next# −Comment− いろんなシチュエーションを押し込んでいくでしょう。書き出してみました。 皆が書いてるかもだけど、私も書きたいのだーーーっ。 |