RAIN NOISE




 ザ・・ザザァ、・・パタポタ・・・、ザー・・
 雨がホテルの窓を激しく打つ。春先の低気圧のせいだ。
 季節風を刺激して九州に雨を降らしている。
 そんなことを確か勇吹は言っていた。


 そんな説明を受けてしまうのはあいかわらず俺の天気予報が当たらないせい。
 あの秋口もそうだった。
「(・・・・もう・・半年も、経ったんだな。)」
 カルノはベットに身を横たえて寝返りを打つ。
 そして、その想いを封じるように、思い起こさないように、目を閉じた。
 パタパタパタ・・・・・ザバァ・・・・
 室内の有線に耳を傾ける。けれどボリュームが小さいのかほとんど聞こえなかった。


 聞こえてくるのは雨音。
 そして彼女の声。


      ―――――  あのときの残像がまだ残ってる 
       一番綺麗だった笑顔と なのにこぼれた涙と 耳鳴りが止むまではそこに立ってた 



 強い雨脚はあの夜のことを心に甦らせる。
 ・・・愛してた。
 ・・・生きていてほしかった。


      ―――――  最後に触れた感触は一瞬で消えたけれど


「・・・・・。」
 揺り動かされて、目覚める。
 ・・・寝ちまったのか・・・・・。
 シャワーを浴びたばかりの勇吹の湿った手のひらが頬をペチペチと叩いた。
「大丈夫?。」
 うなされていたらしい。
 ああ、とだけ答える。
 切ない夢を・・・見ていた。
 今更とりかえしのつかない夢を。
「・・・・。」
 彼は少し言葉をあぐねいてやめた。前に俺がそれを拒んだから・・・。
 

      ―――――  初めて知る残酷な夜は淡く閉じた過去ばかり見せる




                          ――――――PIERROT『Screen 3 残酷な夜』―――――