エンドレス・プロローグ




 コスタデルソルを見下ろして、初夏の陽射が降り注ぐ。
 空と海の青さと白い家並み、陽射はきつく影は濃い、コントラストの強いアンダルシアの景色。白い窓辺からはそんな景色が見えた。
「・・。」
 リージェスとカルノはキャンバスをしめくくる。
 勇吹はいるかな・・、まだ東京から戻ってないかな。
 キャンバスをイーゼルからはずして、他の絵と並べる。
 ちゃんと出来たから、早く勇吹に見せたい。買ってくれるのは、サン夫妻だっけ、なんかいい絵は全部彼らが集めてギャラリーにするとかしないとか。
 別にかまわなかった。勇吹が言うには変に売られるより、いいとの事だった。
 人当たりはいいのに妙に打算的で商才に長けてるので、秘書にはもってこいだなとヒューバートが言っていた。
 Tシャツを脱いだ。午後になって暑い。
「・・。」
 かちゃかちゃと筆の油を備え付けの流しで洗っていると、勇吹がスプライト片手に入ってきた。
「あれ、帰ってたのか?。」
「ついさっきにね。イーゼル片す音がしたけど、終わったのか?。」
「終わったぜ。」
「見ていい?。」
 スプライトを受け取って、その絵を指差した。F80の人物画。
 一気に飲み干し、筆を洗う続きをする。
「いいのかな?。」
 勇吹が首をかしげた。
「いいんだよ。」
 そういうとふーん、と勇吹は苦笑いした。そしてキッチンを差し、昼ご飯にするからおいでと言った。
 筆を窓辺のタオルの上に放る。
 カルノはキッチンに向かった。
 サラダがテーブルに置かれ、勇吹はオムレツとハムサンドを作っていた。
「・・・おまえ、こっちの料理上手くなったな。」
「そう?。」
 勇吹は肩を竦めた。
 ・・・昼食を終えて、カルノはシャワーを浴びる。
 今度はどんな彼女を描こう。タオルで髪の水気を拭きながら部屋の中を歩く。
「・・。(あ、いいのが・・。)」
 勇吹は東側の部屋にいた。本を読んでいた。シエスタの風が入ってきてシーツとカーテンが揺れる。
 ふふっと含み笑いしながら、濡れた肌もそのままにカルノは勇吹の傍らに滑り込んだ。
 真新しいシーツも、本のページの擦れる音も心地いい。
 振りそそぐ、勇吹の笑顔を感じながら目を閉じる。
 優しい空間だった。
 ずっとずとこうしていよう。
 それは確かで幸せな―――。