※現代パラレル物です。それを了承する方、読んでくださいです。如月深雪拝※Lost City −9−彼らは開かれたホールへと入り、更にその奥の待機室に入っていった。 「あー、やっぱり、小野筱だったか。」 後ろから声がした。 「比古。」 「さすが西のお嬢、貫禄あるなぁ。」 「・・・その言葉、大分遠い気がするけど。・・知り合いなのか?。」 しのぐ・・という名前が引っかかった。 自分が知っているのは別のだ。 「いや。つるんでないから顔見知り程度。」 「ふーん。」 「ま、下馬評どおりだな、あっちは。」 「?、じゃあこっちというのは誰なんだよ。」 「・・・・。これだもんなぁ。」 深々と溜息をつく。彰子嬢は大変だ。 横目に彼女を見やると、苦笑いが返ってきた。 ホールが開いたので、中へと来賓が続々と入っていく。 昌浩と彰子もホールに入った。 後ろから来た真鉄とともに比古はテーブルについた。 藤原サイドも道長が来たので座る。 彰子を紹介してもらおうと道長に声をかけてきた者たちがあったが、名刺交換だけで、すぐに会が始まるようだった。照明が暗くなる。 皆席についた。 会は厳かな雰囲気で進行するようだった。 最近のエンターテイメントには程遠い。 貴賓席には、財界や巨匠を中心に集められ、政治家はいなかった。 司会は単調な口調で、名前を呼んでいく。 そのあと祝いの舞が舞われた。 運よく先程の衝撃が激しかったので、眠気は全く起きない。 「(あー・・じゃあ、将軍塚のこともわかってるかも。)」 『かも』は文法上推量で断定ではないが、限りなく断定に近い。 舞が終わり、やがて、本日の主役の初老の男性が出てきた。 背が高く紋付袴がよく似合っている。 壇上に立ち今回の受章についての謝辞を述べていた。 それについてお祝いの言葉が貴賓席からあり、電報が読まれる。 章を受けるにあたっての功績がスライドショーで紹介された。 ここまで2時間。 もうすぐ13時だ。 貴賓席の向こう、待合の部屋から例の二人が出てくる。 「・・・?。」 昌浩と彰子は二人同時に首を傾げた。 顔を見合す。 声に出来ないが感じ取ったものは同じはずだ。 小野筱に誘われて進み出で楓嬢は手に大きな花束を持っていた。 今日の大一番だろう。 「・・・・。」 小野筱はドアの手前で止まり、楓嬢はホールの壇上へと上がった。 彼女からの花束を満面の笑顔で受け取る。そこにかしこまった顔はなく、柔和で優しかった。 この会が儀礼で周囲のために催されたものだということがよくわかった。 彼らは一緒に壇上から降り、ドアの向こうに下がる。 お仕舞の舞が舞われた。 司会が会の終了を告げる。 ホールに照明が戻った。 参加者達は一同に溜息をついた。そのまま喧騒に代わる。 小休憩の後、食事が運ばれてくる次第だ。 「昌浩・・・。違うよね。」 「・・うん。暗かったからかも、と思ったけど、彰子も思ったんなら、間違いないかな。」 うーん、今ひとつ事態がよくわからない。 頭一つひねって、昌浩は席を立った。 「彰子、俺、トイレのついでに、一度試しに通路に出てみる・・。コンタクトがないかもしれないけれど、もしあるなら気が利かないとか言われそうだから。一緒に行く?。」 「・・・ううん。挨拶に回らないと。」 「わかった。」 「おじさん。ちょっと席を外します。すいません。」 「かまわないが。どこへ?。」 「・・・彰子から聞いた方が簡潔かも。」 苦笑して席を立った。 「いろいろか?。」 道長が彰子に尋ねる。 「うん。京都のいろいろ。関連はあっち。」 彰子は指差した。 ドアの向こうの待合室を指していた。 「小野か?。」 「うん。」 名家に対して事も無げに娘も応えている。 昌浩はトイレに行って、待合の部屋に戻り、このホテルの間取りを思い出す。もう一つ和の中庭があったが、そちらの方が、ホールの待合室から近かった。 廊下を抜けて、綺麗な枯山水が見えてくる。 陰陽五行に沿った見事な庭園だ。 昌浩はそこを一周ぐるりと回ってみることにする 賞味10分。何もなかったら、戻ろうと思った。 囲む通路を回り、中庭にも降りる。 コンタクトは特になかった。 春の移ろいが感じられて、後で彰子を連れてこようと思ったりした。 「昌浩。」 「・・・・六合。」 呼ばれて振り向くと六合がいた。今は隠形せずにいる。 「・・・どうかしたのか?。」 「・・・さっき冥官がいたんだ。何かいいたいことあるかもと思って一人になってました。でも考えすぎかも。」 その言葉に六合は怪訝そうにした。 「あまり一人で動くな。何かあったら後で俺が怒られる。」 「六合が?。」 その様子が昌浩にはあまり想像出来ない。 「そうだ。」 でも念を押すように六合は応える。 けれど・・・そうかもしれない。紅蓮がまず怒るだろう・・次に祖父だ。 「・・そうなんだ。ごめん。」 「いや・・・。本家に行ってきた。いるものはホテルに持っていっておいた。・・・晴明は速やかに、と。」 「・・・六合が言うとね・・。」 昌浩は盛大な溜息をついた。片耳を押さえて幻聴を塞ぐ。 あちこちに大先輩がいて、気を使う身空であった。 [08/2/9] #小路Novelに戻る# #Back# #Next# −Comment− しばらく更新が鈍くなるかもです。うーん術を拾い上げるのが手間暇かかるというのが理由です。 それから原稿になるかもしれない文も並行中。これは平安。 そしーて・・現在のアップロードの方針上内容が原稿にもホームページにもならんのを一本書き上げていたり。 ほんとこれどうしような代物です。只今お蔵入り。 数多のおそれ〜> あ、一歩ずつと思ったら二歩下がってる。 合わせて四歩分・・・遠いわTT。 風音が優しくていいね。それにかっこいいわ、強いわで。 太陰が変わりに行くとか・・・。彰子はさすがにやばいのでは?。 |