※二つの事件にも書き足してあります。※現代パラレル物です。それを了承する方、読んでくださいです。如月深雪拝※A fortune-teller〜三様〜大学での検分を終えて霊の配置の書き足しを済ます。 必要なものを考えて地鎮は明日の放課後か明後日土曜日か。 学校を休まなければならないような事件だったら晴明は昌浩に振ってこない。だが、ちゃちゃっと行ってこいというからには、晴明曰く明日の放課後。 「・・が有力だろう。」 とうとうと肩の上で物の怪は説明する。まったくもってその通りで、昌浩は頭を抱え込んだ。 忙しいよう、と唸る。 傍らでつるべおとしが、げたげたと笑い出し始める。 昌浩はうろんげに振り返った。 なんでか、ついてくるのだ。 笑われるたびに、ていっとひと蹴り入れてるのに。 「何でついてくるんだろ。」 それは臆さないでくれるから。 臆さないのに、からかうと面白いから。 「・・・人間が自分達を見ることが出来るのが珍しいんだろ。」 「でも陰陽師だってこと、わかっているんだろ。わかってたら・・・・・うわっ。」 「おわっ。」 昌浩の肩から物の怪は飛び退る。 どこどこどこと、つるべおとしが昌浩の上に落ちてきた。 「・・・・・・おーさすが、昌浩。」 ご多分に漏れず潰された昌浩に物の怪は感歎する。 埋もれたまま昌浩は言葉の続きをしゃべった。 「・・・陰陽師だってわかってたら祓われちゃうかもって、怖くて近寄ってこないのが普通じゃないか?。」 「そのわりに、毎度どばどば潰されているよな。」 正しく指摘しながら物の怪は、恐る恐る近づいてくる人影を振り返って、ひょんと尻尾を振った。 「・・・・。」 威厳の問題かもしれないと、昌浩は自負した。そんなもの自分にあるわけがない。 「くそー・・・・。あーもー、どけってば。」 じたばたと這い出て、仰向けになった。 心配そうに覗き込む彰子が視界に入る。 「え。」 昌浩は硬直した。次いで真っ赤になる。 ぼとんぼとんと、つるべおとし達が体の上から転がっていく。 げたげた笑いながら。 道長と倫子と彰子と、いつもと逆の感じで昌浩がお邪魔して、大学の近くの喫茶店で食事をした。 安倍の家まで送ってもらって、昌浩は車から降りる。 彰子はウィンドウを開けた。 「じゃあね。昌浩。」 「・・・。うん。」 はたはたと昌浩は手を振った。 気づいてないので見なかことにしよう、と思う。 たぶん見てないと思うし・・・・。 「(うー・・。)」 それでも唸る。 明日の待ち合わせのことを考えて、迎えに行くことを思い出す。 「明日・・そうだ。あの件。すっかり忘れていた。」 「・・・・あ。」 彰子がわたわたする。気にせず昌浩は続ける。 「迎えに行くから。明日7時でいい?。」 「・・・。」 彰子は観念して、じとっと昌浩を見た。 「・・・・わざとらしい。昌浩。」 「うーん・・、実際わざとだから。」 「・・・・なんだ?。」 道長が怪訝そうに首を傾げて彰子に尋ねる。 「あとで言う・・・。昌浩、7時に待ってる。・・ありがとう。」 「うん。」 再びぱたぱたと手を振った。 ウィンドウが閉じられて車が揺るやかに発進する。 肩の上で、ずっと黙っていた物の怪がぼそりと呟いた。 「相手の父親を前にして、・・・余裕だよなぁ。」 「は?。」 また不可解なことを物の怪が言っていると、肩越しを見やって、目を半分にした。 後ろでドアが開く音がする。 声に気がついた母親露樹がドアを開いて顔を覗かせた。 「おかえりなさい。」 「ただいまー。」 「帰ったぞー。」 「おかえりなさい。」 聞こえてるのか、聞こえてないはずなのだが、露樹は物の怪の声に反応する。 やはり唖然としてしまう昌浩に露樹はクスリと笑う。 昌浩が肩に何か乗せているようにしているから、すぐにわかる。 でも露樹は種明かしはせず、別のことを言う。 「みんな集まっているから、お祖父さんのところに行きなさい。」 「あ、うん。」 「なんだ?。」 物の怪と顔を合わせる。 昌浩は靴を脱ぎながら玄関の時計を見る。 ・・木曜日、20時。 昨日よりはマシである。 昌浩は廊下を進んで、晴明の部屋に向かう。 部屋には、晴明と吉昌と勾陣と六合がいた。 白い10cm四方の木箱だ。 「ただいま戻りました。」 「おかえり。」 「なんですか?、それ。・・・・あ、もしかして『孤独の箱』。」 昌浩は晴明の前に置かれた箱を覗き込む。 毛虫が9匹干乾びて死んでいた。 箱の内側には、あまねく霊を封じる呪いとあった。 勾陣が肩を竦めた。 「夕方、おまえ達が大学に行ったあと、もう一軒行って見たんだが、ガレージのゴミの山に放ってあったから拝借してきた。家族に知られたくなくて放ってあるって感じだったしな。」 このあと行ってもとの場所に戻せばいいだろうと、判断したらしい。 「蟲毒には、なりえませんね。」 「うむ。」 吉昌の言葉に晴明は同意する。 「昌浩。おまえはどう見る。」 「・・・・・。」 晴明の問いに昌浩は、ドア付近に戻って明かりを消した。 晴明は言うに及ばず、吉昌も昌浩も見鬼なので見える。 ぽうっと札が青白く灯っていた。 「完全なまがい物じゃなかったんだ。」 「・・そうじゃな。」 この光は現世をさ迷っている霊に見える光だった。 心細く漂っている霊にとってこの光は、灯火だった。 迷い蛾のようにふらふらと寄せられてしまう。 「・・・札、破くか・・無効にしないと。」 箱が封印の役割を果たして霊を閉じ込めてしまう。 霊1体だけならまだいいが複数になったら、霊は凝り固まり自我を主張し合い、やがてその中で自我を失い、人だったときの良心を失って、妖と化す。 物の怪が手を伸ばして、ぱちんと電気をつける。昌浩がこちらを見たので、片目を閉じて応じて、晴明の方を見やった。晴明は頷いた。 「・・・・勾陣は天后と。六合は玄武と。」 慎重に行動できる組み合わせを晴明は指示する。 立件されて訴訟沙汰にされている証拠に手を出すのだ。 さすがに人が行って破くわけに行かない。 「確実に。・・・誰のせいにもならないように。」 晴明はそう言い置いた。 かさりと物音がした。 お父さんの・・・書斎?。 書類が積み上がっていたから、崩れたのだろうか。 「・・・・・。」 明日の用意を済ませて、彰子はベッドに潜り込む。 電気を消した。 けれど、すぐに眠れそうにはない。 ・・・・両親に事情を話して、いろいろ相談しあったから。 警備員とか、車での送り向かえとか、そう言うのも出来る。 けど、彰子はそれが嫌だった。友達から『特別』という距離を置かれる。 それも両親に伝えた。 両親は理解を示してくれたし、不審者についてもそれとなく調べてくれるとも言ってくれた。 今日はなんだか頭が冴えすぎていた。 考えすぎるのを止めようとして、目を閉じる。 面倒を厭わない、昌浩のてらいない仕草を思い出す。 自分の思いを通そうと思うと、いつだって昌浩の負担が増えた。 助けてくれる、守ってくれる。でもそれじゃダメだと、・・・一人でも頑張らなきゃと思う。 でも、もしそれを実行に移したら移したで、 昌浩がそれでも守ってくれるのが想像できた。 溜息をつき、彰子は目を開け時計を見る。 0時12分。 早く寝ないと、と思う。ベッドサイドにかけられた学生カバンと制服を眺める。 「・・・・。あ。」 角度に目を瞠る。 はたと硬直した。気にしていたことが全て吹っ飛ぶ。 「・・・・・まーさーひーろー。」 彰子は、ひとつ唸って、ベットに沈没した。 [05/4/9] #小路Novelに戻る# #Back# #Next# −Comment− 二つの事件の方にも書き足してあります。 うう。なかなか書きたいシチュエーションまで辿りつかない。 『篁破幻草子、宿命よりもなお深く』 やーもーなんども繰り返し読んでいますよ。発売日からあのシーンやこのシーンや、そのシーンや、と。 いろいろ書きたいシーンはあるけれど、凝縮させましたという気がしました。 だから、濃い。 融が優しくて、篁がせつなくて、泣きそうになりました。 あー、やっぱり篁にとって融もなんだなーと。 整体屋さん・・・には驚かされます。 体のねじれを見てもらえるときいて、興味津々、評判もよく保険も利く『整骨院』に行きました。スポーツ診療・整体・カイロもやってる病院でした。 山登りで痛めた膝を2年ほど放っておいたのが、ばれました。 「水が溜まって引いた跡があるねー」「背中に指が入らない(ザックを背負ってるため、ものすごく筋肉が堅くなっている)んだよねー、あ、関節は柔らかいわ。」 でも加齢とともに筋肉が衰えているので、膝を痛める結果になったようです。なるほどーと思いました。 筋肉を補強する伸縮性テーピングの貼り方を教えてもらいました。手首(テニス用)と膝を。 自分の体のことを知るには整体屋さんが親切です。 親切なところが見つかればいいんだよねー。保険も効いて(初診1800円、二回目800円だった) 膝のために、インナーソールを入れて、ヒールは出来るだけやめて、ゆっくりのスクワットを開始。 治りました。 ねじれは・・・?。・・・ねじれてなかったです。 |