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カイロ・アレクサンドリア
7.カイロ会議





 カイロ会議

 かつて戦争を終わらせるためにその会議の名があった。
 終わりの無いワルツような会議。





 アレキサンドリアから鉄道で結ばれたカイロには政治的エリアがかつてのようにある。
 公会堂でリリーナが演説をしていた。
 火星への移住は強要しない。
 ただ
 『安穏とした平和を望むならコロニー』
 『更なる資源を求めるなら火星。』

 リリーナの眼差しに、人々はいつだって心打たれる。
 己の正しさを知る者がもつ闘う意志。
 人々は知っていた。

 何を望むのか。
 『平和』という言葉は、戦後を維持するスローガンにはならない。

 望みは何か。
 地位か名誉か、財産か。
 ソドムのごとき零落を望むか。

 私はそれでいい。
 他人を踏みにじりさえしなければ。

 全てはのちの人のために。



 リリーナは最後に付した。
 地球の環境悪化は現実にあり、生産活動に制約が求められる。
 また地球には宇宙の技術を享受してもらわねばならない。

 地球は限りある空間である。







 カイロ会議はアレキサンドリア側の主張が通った。
 コロニーとの取り決めは従来の物で有効な物を使用するという確認をし、
 未知数の火星への取り決めについてかなり具体的に話し合いがもたれた。
 火星への航路。労働者の確保。シフト制。
 火星労働法の枠組みも決められた。


 事務者協議は一ヶ月にも及んだ。





 壇上でヒイロユイはオブザーバーとして、コロニー側の思考や意図を語らせられた。
 火星への意思を地球が語ればコロニーは追随する。
 だがそれがコロニーの弱みなのだ、と。
 コロニーにおいての人類は、地球生まれのそれと違う。
 「地球が忘れられない。」
 必ず傍にある地球生まれの人類にはこの思考はない。
 更に宇宙を開拓する精神もまた地球に還元される。
 模写からの脱却という意思の改革がコロニーには実は必要なのだと。



 ただ、それをするのは俺じゃない。
 ヒイロは心の中で毒づいた。
 言いたい放題と批評されつつも論議になり、自分はさっさと帰宅する。
 郵便受けに少し大きめの封書があった。送り主はヒルデだった。
「・・・・。」
 ミニチュアの長距離輸送機。端から見れば本当に模型だ。しかも割とかなり精密でおもちゃにしては本格的な塗装なのでマニアックさもあった。
 問題は素材。そこが問題。
 例の素材についての加工品だった。
 自分のデータを見ているデュオである。
 鮮やかな板金に、半眼になる。
 そして同時に軽い焦燥。

 そろそろ頃合いだ。
 宇宙に戻るべきだろう。















 リリーナが再び訪れて協議に参加する。
 リリーナは戦後処理の大統領ではない。
 火星開発の大統領だと、記事にも取り扱われるようなってきた。


 大統領の案内役を打診されたが、ヒイロは技術者だからと固辞し、メインコントロールのプログラム更新作業の方に出向く。
「あら。どうしてここに?。」
 中に入ってきたのは、シルビアだ。
「大統領の案内役はしないの?。」
「俺はコロニーの技術者だ。ここのじゃない。」
「・・それはそうね。」
 シルビアはあらためてここにいるヒイロユイを眺める。彼の存在が不自然でないといいと思う。
「法務部に行ってきたのか。」
 ヒイロはさしさわりない程度の受け答えだ。
 取り越し苦労のようだ。
「そう。労働規則が出来る前にいろいろ滑り込ませたいから。」
「そうか。」
「規則をいつもみんなに見てもらうにはどうしたらいいかしら。」
「ポップアップでもさせたらどうだ。」
「見苦しくないかしら?。」
「俺は別に気にしない。プログラムのバグの警告に比べればマシなポップアップだ。」
「楽しいお目汚しなら多目にも見てくれるかしら。」
 と、呟いてシルビアは居住まいを正した。ヒイロは無視。
「皆さん。どうぞそのままで結構です。」
 リリーナが案内されて入った。
 目を瞬かせ呟く。
「・・・。シルビアさん。いらしていたんですか。」
「はい。今日はこちらの法務部にお邪魔させていただきました。」
「労働法ですか?。」
「いえ。規則です。妥協点というところでしょうか。経営側が労働者に媚びるばかりではうまくいきませんし。」
 そう言っている間にリリーナは促され、コントロールルームを案内されて行く。
 まるでオードリへブパーン演じるアン王女のようだ。
 今日の予定はとあれこれと言われ急かされる。
 シルビアはヒイロの真横に立ってその様子を眺めた。
 やがて出て行くまで・・出て行ったあともヒイロユイは見向きもしない。徹底している。そして大統領も徹底している。
「・・。」
 シルビアはヒイロユイのその眼前で片手を降って出て行き、大統領に微笑んで、その隣を歩くことを許してもらう。
 自分はノベンタ元帥の孫で、傘に着るつもりはないが、使っている。



[13/8/18]
■シンプルにシンプルに、言いたいことだけ。あとイタリーに。ああそれにしてもカイロアレキサンドリアが終わらない・・。あと一つ。


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