4.

 


 ジョージのロッジはタホ湖の畔にあった。高度の高いこの辺りは時期が時期だけにまだ雪深い。
 ザクッ、ザクッ、
 ドッ・・・バサバサッ、・・・屋根に降り積もった雪を払い除けてはしごを衝立た。
「ったく。昨日もずいぶん振りやがったな。」
 2階建てのログハウスの屋根にカルノは登る。
「カルノー、いい?。」
 屋根の下から勇吹が呼んだ。
「ん、ああ、ちょっと待てって。」
 カルノはメジャーを伸ばしてその端を下の勇吹へと放る。
 そしてバサッと、設計図を広げた。
 グライダーや、鳥の体のつくりなどを参考に試行錯誤して、カルノと勇吹で作った翼の設計図だ。
「いいぜ。勇吹。」
「いくよ。・・・それっ。」
 ふわっと冷気が揺らいで、彼を取り巻く空気が雪で清浄なこの辺りをさらに洗礼する。
 勇吹は周囲の雪に劣らない真っ白な翼を背中から生やさせた。
「いいよー。」
「おう。」
 その翼の先をカルノはつかんだ。
 骨格のラインに沿うようにメジャーをあてる。
「あー・・・。もうちょい、右側、長く、3センチ。」
 設計図を持ちながら計っていく。
「こんなもん?。」
 そっと神霊眼を使って翼の長さを調節する。
「オッケー。」
 屋根から顔を覗かせて、カルノは答えた。
「じゃー、試すよ。」
 翼が大きく広がった。・・動かしてみる。思い通り風を取り込んでくれそうだ。
 バサバサッと強く羽ばたいた。
「あ・・。」
 ふわっと、足元が浮いた。
「ととっ・・・。」
 けれど、すぐにバランスが崩れそうになる。浮力を維持しにくい。
「勇吹。」
 カルノが両手を差し出した。引っ張って、落ちる前に屋根に上がらせる。
「結構いいセン、行ってないか?。」
「ああ、かもしれない。」
 落ちることへの緊張が飛べたことで緩む。確かな手応えに勇吹は嬉しそうだった。
「これで、今度はもっと広いところで試してみようぜ。」
「ああ。」
 興奮が冷めないのか、勇吹が弾けるように笑って言った。
「そんで、一緒に飛ぼうよ。」
 青い空に降ったばかりの雪のような白い翼が映える。
 自分の翼はそうではないけれど。
「・・・いいな、それ。」
 一緒に飛べることは間違いないことに気付く。
 嬉しくて笑い返した。
 サアッ、と風が吹き抜けて、勇吹の身体が少し飛ばされる。トンとカルノの肩に手をついて、勇吹はその風を上手い具合に翼の後ろに逃がした。
「・・・・・。」
 ――――肩越しの風景。
 守りたいと思う景色だった。