PTSD




「PTSD?。」
「ああ、日本の医者が言うにはな。」
 350mlのビール瓶を傾けて、カルノはシェーラの言葉に頷いた。
「・・・まあ、勇吹の鋼鉄の精神だって、あんなふうにされちゃもつわけないか。」
「・・・・。」
「・・・勇吹の怪我はー?。」
 膝の上でヒルダをこねくりまわしながら、ユーハが尋ねる。
「俺が治したから、平気。」
「あ、っそう。」
「・・・そんなに心配する程でもねーよ。あいつは自分のせいで誰か死ぬのが怖いだけなんだ。」
 この手が何もしなくても、誰かを殺すことが出来る。その大義名分になる。
 今までの戦争がこれからの戦争にならないとは言えない。
「要は私らが死ななきゃいいんだろ。老衰以外で。」
「そんなとこ。昼間はほとんど元気にしてるし。やることもいっぱいあるしな。」
「祭り上げられてても、立ちまわりはうまかったからな。・・・あれは王というより、経理兼秘書って感じだ。」
「言えてら。」
 勇吹の力を惜しむ人は多い。
 そして、ここに立つ嫌悪すべきほどの最強の魔法使いも。
 世界の頂点に立つ二人。そしてそれが嫌いな二人。
「私達としても、あんたたちが表で楽しんでてくれたほうが、ありがたいね。」
「別に邪魔はしないぜ。」
「でも、知ってやがんだろ。」
 サングリアのグラス越しに指差してにかっとシェーラは笑う。
「・・・俺達が聞いてるって、わかっててやるからな。あんたら。」
「騎士団もな。なんにせよ、干渉しないってわかってるからな。こっちも商売だ。ほらサングリア。おかわり。」
 空になったデカンタを振る。
 ・・太るぞ、と言ったら、そのデカンタを投げて、心配無用と言った。
「多めにある?。もって帰りたいんだけど。」
「明日勇吹に聞け。わかんねーよ。」
「家事が出来ないのは相変わらずだあねぇ、改善したら。」
「それはレヴィに言え。」
 俺はガスレンジ使えるようになったと、それが不自由無き魔法使いの発言だった。