聖騎士団大聖堂 聖騎士団大聖堂の戸が引かれ、開かれる。 カルノは振り返って、勇吹を見た。 「・・・。」 いつものように勇吹は取り澄ました顔で歩み出でた。 ホールで待つ、友人達の前に。 狩衣を纏い、変わらない立ち姿に安堵の気色が広がっていく。、 勇吹は用意された壇上には上がらなかった。 でもそれも皆わかっているようだった。 「お礼が言いたかったんだ、皆に。」 一つ呼吸をおいて、勇吹は本当に言いたかった言葉を彼らに伝える。 「あの日、助けてくれてありがとう。」 ずっとこれだけは言いたくて、痛む体を、沈みそうになる心を押して、出てきた。 「・・・・。」 騎士団の人だかりが分かれる。 「・・・アンヌ様。」 勇吹を十字架に追いやった彼女が、涼しい顔をして現れた。 「・・。」 会議によって、あなた達の処遇は、見解の一致に至りました。 干渉や協力を一切なさらないように。 彼女は笑顔を湛えて、これであなた達は自由だと、言った。 そう、どちらでも良かったのだ、彼女にしてみれば。 十字架に掛けられて彼が死のうと、 生きて、追放しようと、彼女の地位は守られる。 勇吹は穏やかに笑い、頷いて、了解した。 「・・・。」 レヴィとカルノは目を細め、言葉を飲んだ。 タチの悪い話で、勇吹がこの同能力者を嫌いではないのだ。 「あなたを見ていると、強かさを思い知らされる。」 そんな感想を述べたりして、彼女をほったらかす。 不可解な理解が、勇吹とアンヌの間にはあった。 「御身大切に。」 「・・・さよなら。」 狩衣を翻して、勇吹は踵を返した。 |