優しくて大きな力 カルノは神に対抗する力を高めて行く。 勇吹の神のごとき結界も。 痛みと恐怖から。 人々から。 勇吹の声を。 勇吹の笑顔を。 そして勇吹が望むものを、取り返す。 カルノの背中から、荘厳な光を放つ翼が現れる。 その美しい姿態をしならせて、高々と右腕を天に伸ばす。 瞬間、ぐんっと結界を破る魔法に手応えを感じた。 「プリティ・ナギっ。」 目を見張って驚くカルノにプリティ・ナギは不遜に笑った。 プリティ・ナギは、かつてのナギの姿で。 「おまえは本当に私の力を使わないな。」 ナギの口調で呟く。 「ちっとは頼れ。」 その体をくねらせて天を睨んだ。 「ちっとも頼らないから・・・。」 地上に隕石が落下しても、勇吹が捕らわれても。 「・・・おかげで力を蓄えられた。」 そして、カルノの知らない言葉を呟いた。 「・・・。だからこれは私の意思だ。」 だが、それは神の力を返す呪いであることがわかった。 勇吹を誘う声が遠のいていくからだ。 なんていう圧倒的な高次生物の力。 「(これがナギの力。)」 そら恐ろしいと思う。 わかってはいたが、見せつけられるものがあった。 プリティ・ナギは、呪詛を呟いた。 「聞け。そして、後悔せよ。数多の同朋が死に、そして傷ついたことを、私は大いに怒りに感じている。私は、おまえからおまえが欲しいものを奪ってやろう。」 なんて高圧的な・・。 カルノは可笑しさで口元が歪む。 そして、目を閉じる。額に汗が浮かんだ。 詠唱する。 勇吹の結界を破り、彼の元に行く。 「カルノ。勇吹の元に飛べ。」 ナギは優しく耳元で囁いた。 「・・・・。ああ。」 そして人差し指で魔方陣の軌跡をなぞる。 呼ぶのは雷鳴だ。 「渡さない。」 ナギは翼を広げ、そしてカルノの翼を無理やり引出す。 「ぐ・・っ。」 痛みに耐える。 勇吹の魔法がちぎれて行く。 高く高く聳える。 その黒い翼にナギは自らを同化させた。 ナギの高次生物の力が炸裂した。 神の手が霧散していく。 魔法使い達の力が加わり、完全に寸断する。 雷鳴の後に、勇吹を抱えてカルノは立ち尽くす。 硝煙の匂いと人々のヒステリーに恐怖を覚え、 勇吹の凄惨な有様に、 「・・・・。」 泣く。 壊れてなんかいない。 酷い。 酷過ぎる。 それは勇吹が教えてくれた、 涙と怒りの意味。 |