逡巡





 長い逡巡だった。
「おまえは俺の傍にずっといるんだ。いいな。」
 それは生きる理由になる。
 生きたい。生き抜く。
 そうやっていつも、カルノは生きてきた。
 その光は、押さえがたい疲れに死を望む俺を、強引に引き戻す。

 死ぬことで神様の傍に、
 生きて、カルノの傍に、

 叶うなら、願うことなら、カルノの傍に。



 傍にいてもいい?。
 ずっとずっと繰り返し思ってきた。
 いつも自分の中で出した答えはノーで。
 何故なら俺は愛した人が他の人と思うことを許せない。
 そんなエゴイストだってわかって、心が離れていくのが怖い。
 だから、
 かけがえのない人がいるカルノの言葉を、俺は聞かなかった。
「・・・・・。」
 ―――信じてやれよ。
「(信じてるよ。)」
 ―――信じるしかないだろ、まだ。
 唐突に、友人の言葉が浮かんだ。
「(ああ、俺、信じてなかったんだ。)」
 愛してる人を信じてなかったんだ。
 信じてないのに愛してるなんておこがましいにもほどがある。
 けれど、愛してる。


 神様の力を跳ね返して、
 全ての人から、奪って、
 「傍に置いて誰が渡すものか。」
 その凄絶な決意は、
「(うぬぼれるな。)」
 相反する心が今もなお制止の叫び声を上げていた。
 それでも勇吹は自らに問う。

 愛してる。
 愛してる。


「・・・・うん。」
 信じる。
 愛してると、君が、俺を。