絶対に、おまえを手に入れてやる。


「・・・・・。」
 何モノから?


 ザーッと熱いシャワーを身体に当てる。
 石鹸の泡を洗い流す。
 勇吹は仰のいて顔から温水を被った。
「・・・わかってなくて、言うんだもんな。」

 何モノから?

 言葉にしない声を何度も呟く。

 キュッとシャワーのコックを閉めて、シャワールームを出る。鏡に自分が映ったが、水蒸気で曇った。
 けれど見なくてもわかった。
 なんの証も残ってないことを。
 勇吹は肩を抑えて歯噛みした。
 カルノのモノになれない自分。
 突きつけられた事実に、自分が誰のモノか本当にわからなくなった。
「・・・・しっかりしろ。」
 肩から手を離してぱしっと頬を打つ。
 水蒸気が晴れて、鏡に自分が再び映った。
 ・・・・痕くらいつけてくれたっていいのに。
 少しだけ拗ねたように呟いて、

 でも、この心はカルノのものなのだと。






「カルノ。起きてよ。」
「・・・ん。」
 目を覚ます。
 勇吹の顔があったから、その襟をつかんで、キスした。
 瞬間、ぼかっと叩かれた。
「夕べだけって言っただろ。」
「ケチ。」
「言ってなさい。」
 すっかり身支度を整えた勇吹がそこにいた。
 ベットに再び引きずり込んで、キスマークの一つもつけてやろうかと思った。
 仕事があるだろうと思ってしなかったのだが。
「ねえ、カルノ。」
 のろのろと起き上がるカルノに、勇吹は呟いた。
「最近、何か不穏だよ。」
「・・・・・そうだな。」
「俺と、おまえで占じた方が、いいと思う。」
「・・・占いって嫌いなんだけど。」
「じゃあ、情報収集。」
「・・・。」
 言葉を変えただけじゃねーかと思う。
 そんなふうに正当化というか都合よく言い変えるのは勇吹の真骨頂だ。
「そうだな。じゃあ、レヴィん所で明日夕方5時でいいか?。」
「?。今日、なんか用事あるの?。」
「野暮用。」
 視線を泳がしてそう呟いた。おまえの絵を描くとはちょっとまだ言えない。
「・・・・・おまえ、見えるものと見えないものどっちが好き?。」
「・・・・?。見えた方がいいけど?。」
「わかった。」
 グイッと引っ張って、襟を開く。
 左の首筋に唇を押し当てた。
「っ。」
 勇吹の身体が一瞬にして、強張った。
「・・・。」
 熱も帯びて行く。
 カルノは軽く吸う。・・・赤く痕が残る。







 その痕さえもいずれ、消えた。

















 1999年7月――――九連隕石の落下。