部屋に龍雷がいるので、
 ラジオを持ち込んで、カルノは勇吹のベットを占領していた。
「・・・・。」
 勇吹は傍ら、ベットに寄りかかっている。


    I'm proud 壊れそうで崩れそな情熱を つなぎとめる何かいつも捜し続けてた

    I’m proud
    作詞作曲 小室 哲哉
    唄 華原 朋美


 DJが新曲のタイトルを告げ、イントロが流れる。
 ぱらっとページが擦れる音がした。
 寝そべったカルノの手元で週刊誌が。
 勇吹の手元では魔法関連の冊子が。
 カルノは横目にちらりと勇吹を見た。
 彼は内容に視線を落とし、黙々と勉強をしている。
「・・・・。」
 うつ伏せて、そのまま眺める。
 気にもせず、無視でもなく、
 俺の存在を邪魔にしてない背中。
 最初は対して続かないだろうと思っていた。
 出会いも出会いだし、再会して間も無いし、勇吹の立場も八方塞で俺しかいなかった。
 でも勇吹は神聖系だ。
 すぐに俺を忌嫌い、怖がることになるだろうとたかをくくっていた。
 そしてしばらく一緒にすごしている間にいろんな奴が会いに来て、自分のこと俺のことを言い置いて行った。
 勇吹は笑っていたが、時間の問題だなと思っていた。そのうち離れて行くだろう、もしくは俺からどこか行くだろう。
 だけど、
 変わらずにくれる何気ない勇吹の同調は、いつのまにか俺をまどろませては、ハッとさせて。
 どうせ長くは続かないのだから、馴染んでんじゃねぇと思い直したりした。
 けれど、勇吹は離れて行かなかった。態度を改めたりもしていない。
 そして、相変わらず、
 勇吹は俺を傷つけないまま。




 俺を邪魔にする勇吹が思いつかない。
 これまでも、これからも。



    I'm proud いつからか自分を誇れる様に
    なってきたのはきっと あなたに会えた夜から


 勇吹がラジオの音に顔を上げた。






 週刊誌を放り、勇吹の頭の後ろに仰向けになって寝っ転がる。
 手を伸ばして邪魔してやらんばかりに、つんつんと勇吹の髪を引っ張った。
「・・・・。」
 コノ手ハ魔物ノ手デ、汚イ。
 でも、勇吹の傍にいると、いずれそんなことも思わなくなりそうだった。
 浄化とか癒しとか、そんな劇的なものではなく、
 心に寄り添って、わだかまりを解く時間を、くれるだけ。
「・・カルノ?。」
 首筋に髪が当たってちょっとくすぐったい。
「・・・こうしてていーい?。」
 甘えた声で試しに言ってみる。
「・・・。・・いいよ。」
 案の定、人を甘やかす勇吹の言葉が返ってきた。