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プロローグ

2.マラッカ






 リリーナとボディーガードを乗せた車は、ニース市内のテレビ局に程なくして着いた。
 急遽の移動のため、連絡を受け駆けつけられたマスコミはそのテレビ局と周辺国家のマスコミだけで、それほど多くはなかった。それらを素通りし、局要人用出入口に車を止める。
 ヒイロはドアを開けて先に降りた。辺りを伺う。
 そして運転席反対側の窓をノックし、開けさせた。
「・・俺は表を見てくる。警護は任せる」
「了解しました。」
 さらりとジョーも応対する。
 セツは反対側のドアを使い車を降りた。
「・・・。」
 ヒイロはリリーナに手を差し出した。
 リリーナはその手を取る。白い靴が地についてそっとリリーナが出てくる。
 温かい手が離れた。
「・・・ありがとうございます。ここからはおかまいなく。」
「・・・。」
 髪がなびいて手を撫でていく。そしてそれすらも逃げた。
 局内に入っていくリリーナを見送る。
 セツが隣に並ぶように歩き、後方にジョーがついた。
「・・・。」
 見送って、ややあって右手を腰にやり溜息をついた。
 そして踵を返した。





 リリーナは放送の全チャンネルジャックをしなかった。
 予告を済ませ、そのまま局内に留まり、その間集まってきた記者達の質問に答えていた。
 三時間後リリーナは会見の席に立った。
「今から私が話すことは、外務次官として皆様に情報を提供するものであります。」
 大統領としてではなく?、いう声が上がる。
 リリーナは肯定した。
「大統領になるという思いは選挙という場において公にしたいと思います。」
 リリーナはプリベンダーから受け取った資料を元に事件のあらましを語る。
 大体報道関係者が独自に調べたものと変わりない。今後の捜査方針を付け加える。
 プリベンダーという警察機構があるというのは、本当ですか?、という質問が上がった。
 既にプリベンダーという組織は報道関係者に感づかれていたが、表沙汰にしたのが今回の事件だ。
 事前にもたらされたというテロリストの情報がどこからきたのか。
 平和や平穏を快く思わない集団に争う口実を与えたようなものだ。
「プリベンダーという組織はあります。」
 口にすればリリーナも一蓮托生とみなされるだろう。だがもはや濁せない。
「皆さんが思うところは一つだと思います。かつての連合がそうでした。歴史を紐解けば警察機構を名乗って軍部化するということは過去に幾度もあります。だからプリベンダーという組織がそうならないとは私は言えません。」
 リリーナは真剣な眼差しでカメラを見る。笑ってごまかすような話し方をリリーナはしなかった。
 その組織の存在をあなたは知っていたのか、という問いが上がった。
 リリーナは首肯する。
「はい。幾度と無く助けていただいています。」
 軍部癒着と思われるだろう。
 大統領選に響くかもしれない。
 だが一方でこの事態は、リリーナには打算のうちにあった。
 世界は指導者を望んでいた。そのため当初から選挙にならないのではと感じている。
 選挙を公示しても一の理由はテロを恐れ、二の理由に勝ち目の無い選挙を上げて、誰も立候補しないという状況になるかもしれない。
「・・・。」
 おそらくは信任投票に変わる。
 会見の席の一番後ろ、報道関係者に紛れるようにヒイロはいた。壁にもたれてこちらを凝視している。
 このような投票をヒイロは肯定するのだろうか。
 ヒイロは何も言わない。
 私は納得できない。
 だからプリベンダーの一件が私の政治姿勢の疑問になってくれるならいいとさえ思う。
 行き過ぎの指導者論の歯止めになる。
「言えることは、いずれ縮小・解体されていくことを望む、ということです。」
 リリーナは落ち着いた声と真摯な眼差しと思いで、報道関係者と相対した。







 3日後、選挙が公示された。
 報道関係者や民衆の大方の予想どおり立候補はリリーナのみとなった。
 そこで信任投票をリリーナは呼びかけた。
 あくまで安易な受諾を拒否した。
 そして、それによって政治が一ヶ月以上滞ることになる。政治が滞れば経済もだ。
 だがそうまでしても、指導者論を退け、彼女の政治姿勢を再考させる時間が民衆には必要だった。
 リリーナは積極的に地域を回った。
 南欧から始まった施政方針演説は、呼ばれればどこにでも向かった。
 アフリカ、北米、南米、オセアニア。
 二週間で西側諸国を半分といったところだ。
 明日からは東南アジアに入る。
 ヒイロはボディーガードを一時外れた。
 必要ないからだ。
 リリーナは12時間単位で移動していく。それをいちいちスナイパーが追うわけが無い。
 行動範囲だってしれている。そして必然的に移動手段だって限られてくる。
 前大統領が打たれたのはコルシカ。
 リリーナが狙われたホテルはその対岸だ。おそらくは地中海海域で活動するのが精一杯なのだろう。
「(おそらくは・・ジブラルタル。)」
 本を片手に内容とは別のことを考えていた。
 いや、もちろん本の内容にも目を通してはいる。
 ここは旧欧州立図書館。
 やはり蔵書の数がコロニーと格段に違う。
 欲しい情報と言うより、興味深いものが揃っているのだ。
 ヒイロはスナイパーがいる場所に中りをつけ、にわかに本に戻る。
 本格的に文章に集中しようと、白地に青と茶のチェックのシャツの長袖をアンクレットで押さえた。
「・・・。」
 そこに一本の電話がかかってくる。
 コロニーからだ。
 相手はロビンだ。『話がある』と一言メールが入っており、返信として用件を尋ねる文章と所在として地球のこの図書館にいるということを書いて送った。ただそれについての返信は無かった。
「はい。」
「<・・おお、かかった。>」
「話とは?。」
「<いきなり本題かよ。学校さぼってどこにいるかと思えば未成年が。でもまあいい。地球にいるんだろ>」
 ロビンは一息に言った。
「空港を作って来い。」
 ヒイロは憮然とする。そちらこそ、出し抜けに何をだ。
「<軍港の宇宙港化に関して、地球の大学がL1の大学に提携を求めてきて、今、技術者を出す話が持ち上がっている。俺はおまえを推挙するつもりだ。>」
「・・・。」
「おまえシャトルの研究を進めてるんだろ。だったらそれ仕様の空港を作ってこい。」
 ヒイロは息をかすかに呑む。
 『それ仕様の』とくるとは。
 作れるのか、意見を反映させられるのか。ロビンは軽口は叩くが、誇大には言わない。
「・・一作業員で参加させてもらう。」
「<駄目だ。おまえは上。最低でも現場監督の責任者。絶対だ。>」
 ロビンはヒイロに四の五の挟ませず畳み掛けるように言い放つ。
「<おまえみたいなのが部下だと上司が不幸になる。かわいそうだ。泣かせる気か?>」
 ぼろかすである。
「返事はいつまでだ。」
「<一ヶ月・・。いや信任投票が済んでからだな。どのみち届出が通らない。政経が滞っているからな・・>」
 ヒイロは、今、その渦中にいると言えた。
 確かにその通りだろう。
「わかった。」
「<それは了解だな。推薦しておく。ああ、そっちでいい本があったらデータ化してくれな。じゃ>」
 そうしてがちゃりと切れた。
 それは自分で来てやれと端末を見ながら思う。
 後ろからコツコツと足音がした。
「忙しそうだな。」
 レディ・アンだ。
 クリーム色を基調としたツーピースのスカート。スーカーフの金と赤が主張している。
「それがおまえの体裁か?。」
 端末を指差す。
「ああ。」
 電話のあとの興奮を残しもしないで端末を胸に戻し、ヒイロは書に向かう。
 レディ・アンはこっそりと笑った。
 プリベンダー内ではさっそく別行動を取っていると言われている。顰蹙を買っているわけではなく、全ての行動に付き添う必要はないと、皆理解している。
 それでも文句じみているのは、所属不明の彼に会ってみたいからだろう。
「・・・・。」
 が、いずれ別の顔でお目見えする。
 気負う風はまるで無いが、彼は誰もが一様に納得する存在になるつもりだ。
 周到に、緻密に。そう言ってしまうとまるで謀のように聞こえるが違う。彼は大きくなるのにほんの少し背伸びをしなければならないだけだ。
 髪を伸ばし始めたマリーメイアを思う。
 頑なで孤独な彼女も少しずつ友と呼べるべきものが出来ている。
「だとしたら今回は本当にすまなかったな。」
 レディ・アンの謝罪にヒイロは書に目を落としたまま呟く。
「別に。相手が相手だ。組織は個人に対して対応が遅れがちになる。本来ならおまえだけで十分なはずだ。」
 だがそうもいかない。レディ・アンが一人工作員として動けば、民衆が恐れを抱く。過去の経歴がそうさせる。
 レディ・アンは肩を竦めた。組織の指令系統にありながら個人プレイも多かった自分だ。トレーズのため全て引き受けるつもりだった。
 今はそうはいかない。トレーズもいない。
 プリベンダーを胡散臭いものにするわけにいかない。
 だが後手に回る気はない。
 彼を呼び寄せ遊撃になってもらうのが一番だと思った判断は誤っていない。遊撃には遊撃を。
 引き受けてくれるかは彼しだいだったが、まあそこは彼の私情を挟んでくれたのだ。
 本当にどういう経緯でそういうことになるのかは知らないが、彼の彼女に対してしてきた行為が好意によるものなら、ある程度納得がいく。
 聖ガブリエル学園での防衛然り、ルクセンブルクでの戦闘然り。
 ブリュッセル大統領府を撃つ神経はよくわからないが、それも延長なのだろう。
 レディ・アンは嘆息し、再び彼とマリーメイアを比べた。子供と言うのは大きくなるものだ。こちらが得手不得手を言っているうちに勝手に大きくなっている。
 背がすらりと伸びて、見目もいい。
 昔は醜ければ生かし、同情を誘うものならば殺せと言った。マスメディアに対して容貌は重要だ。
 レディ・アンは得意の打算をする。
「今日夕刻マラッカか?。」
「ああ。次の黒海が気になる。先回りさせてもらう。」
「わかった。」
 一を言えば、レディ・アンが思うところを違わない。期待はずれも無い。
 部下としてよりは相棒にしたいのが本音だ。
 もっと言えばもう二度と敵として現れて欲しくない。奴は予想たがわず思うところを違わない。想像しうる弱みをまさか知るまいと思ってはならず、確実についてくるだろう。
 レディ・アンは地中海沿岸の地続きの国境における出入国のデータをヒイロに手渡した。
 完全ではない。が、ヒイロは頷いた。
「十分だ。」
「そうか。」
 用件は済んだ。
 これ以上は邪魔だなと思った。踵を返して歩き出し、閲覧室のドアを開けた。
「似合っているぞ。この場も、人に物を頼まれるおまえもな。」
 ヒイロを肩越しに見て、ひらりと一つ手を振った。







 マラッカ海峡を望む空港ホテルのプールでリリーナは泳いでいた。
 日の出の前の薄明かりが、室内プールの天窓を仄かに白ませていた。
 ぱしゃん。
 その天窓を仰ぎながらリリーナは水面に浮く。水着は競泳用よりはラフな肩紐のワンピース。黒地で脇と胸元に流れるような水色と黄のラインが入っていた。
 ボディガードのジョーとセツのほかは誰もいない。響くのはリリーナの周りの水の音だけだ。
「(ニースで・・)」
 プライベートナンバーでそこを動くなと言われた。それから窓に近づくなと。
 言葉はそれきりで、あっという間に切れた。
 敵、味方、報道関係者、その他方面のあらゆる電波が飛び交う中、このダイレクトにつながる番号の周波数を知られないためだろう。
 忠告どおりリリーナは滞在していたニース市内のホテルに留まった。
 その三日の間にヒイロは地球に来た。
 月を回るL1から来るのなら、あの電話のあとすぐにこちらに向かったのだ。
「(何のために・・・・?)」
 こうしていると本当にセキュリティのようだ。
 今まで絶対に引き受けなかったのに今回に限ってとどうしてなのだろう。
 他のボディガードには任せきれない何かがあるのだろうか。犯人はスナイパーだ。しかもコロニー指導者ヒイロ・ユイを暗殺したという。
 本当にそういうことならばヒイロが居れば安心で、レディ・アンは間違いなく適任者を寄越している。
 そういうことでヒイロも受諾したのかもしれない。
「(ヒイロにはしなくてはならないことがたくさんあるのに・・。)」
 リリーナはひとかきする。ぱしゃんと一つ音を立て、つーっと水の上を体が漂う。
 憶測ではこれが限界だと思った。
 警備に従うと言った。優先的に他に考えなくてはならないことがある。ヒイロも私がそれをしなければならないと思っているだろう。わかっている。
 だが、今日話すことは決まっていた。
 だからまたヒイロのことを考えてしまう。
 そっと目を伏せる。
 心はこんなにも穏やかでいられないのに。
 ――おかまいなく。
 それ以降二週間、何も話していない。
 身についたものとはいえ、おくびにも出さないこの身を呪う。
 プールサイドを探っても、ヒイロの気配はない。そもそも移動の飛行機にもいなかったので近頃は彼がいるのかいないのかもわからない。
 二週間に彼の姿を見たのは三度だけ。
「(コロニーなら。)」
 目覚めて、こんな朝に温もりを与えてくれる。
 この朝はヒイロの温もりが触れてこない。
 期待しつつ、でもヒイロは来ないと断言できる。律儀なほど、公私は分ける人だ。
 薄情な朝焼けがリリーナの時間をオフからオンにしていく。
「・・・・。」
 でも実はまだそれは我慢できる。
「(名前を呼べない)」
 リリーナは穏やかざる心を押し隠すように、静かに漂っていた。



 夕べここに着いたのが25時と聞いた。部屋で休んでいるのかと思えば、プールにいる。
 ヒイロは16時に図書館を出て今マラッカについた。
 警備の継続だが、問題なのは明日からなのでとりたててすることもない。室内プールに背を向け、屋外プールに続くのエントランスのドアの柱にもたれて、腕を組む。
 室内プールからリリーナの水をかく音がする。
 ――警備の指示に従うと申し上げました。
 あきらかに怒っている声だった。
 怒っている彼女が好ましくて、怒らせているときもある。
 ただ今回は悲しませてもいた。
 ヒイロは目を伏せた。
「俺がのこのこ出てきたのが気に入らない・・か。」
 だが、この身は彼女を守るのにはうってつけで、コロニーにいるときの焦燥が今ここにない。
 直に守るという状態が実はどれだけ自分の心を平穏にしているか。
 そうしてずるずると守りたくなる。
 俺がいる限り彼女を誰にも殺させない自信がある。
「・・・・。」
 もたれた壁はひやりとしていた。窓の向こうには彼女がいる。
 L1なら笑顔で歩いてくる距離にある彼女が、エントランスに出てこない。
 当然だ。
 今はセキュリティと大統領候補なのだから。リリーナも徹底している。
 リリーナが触れた掌を口元に当てる。だが既に何の温もりもなかった。
 それでも心は冷静で平穏そのものだ。
 ただ衝動がこの身を動かす。
 自分に向けられる独り善がりな彼女の眼差しが、淋しいと訴える。
 頭で考えるより、心で思うより、体は自分に素直だった。・・自分がいかに衝動的であるか、いい加減身に沁みてもいた。
 危険なほど、この朝焼けの壁の冷たさを感じている。口元に当てられた手はヒイロがまるで何か考えをめぐらせているているように見せた。
 だが何のことは無い。考えていることなど恐ろしくシンプルだった。
「・・・・・。」
 抱きしめたい。




 からんとドアが開く。ジョーがこちらに気がついて出てきた。
「チーフ。戻られていたんですか?。」
 チーフと言う呼ばれ方を何故するのかよくわからないが呼ばせておいている。
 ただ昨日のロビンの言葉にもあったので今日は少し耳に残る。
「油を売っていただけだ。」
「まあ今は通常シフトですからね。チーフも暇じゃないとレディ・アンから伺っています。」
 ジョーの背後のプールで水をかく音が一瞬止まる。だが再び泳ぎだした。
「黒海ですが、ドーリアン夫人の都合がついたので合流されます。そのままお二人して休暇に入ることが出来るようですよ。三日間だけですけれどね。」
 ドーリアン夫人もまたリリーナ同様世界を回っていた。 福祉施設や教育施設など、実際にはリリーナが行ければいい場所をドーリアン夫人が当たっていた。
 2回見かけた。
 リリーナと行程が重なれば夫人を守る必要性もあったから、こちらの通常のセキュリティを増やさせて、ジョーを向かわせている。
「夫人も強かですよ。リリーナ様は演出が苦手ですが、夫人は出来ます。」
 リリーナのイメージ作りをドーリアン夫人は一手に引き受けていた。
 通常ファーストレディがするマスメディア対策でもある。
 リリーナが政権放送に出ればマスメディアの脚色も数限りない。それを嫌って人々は、リリーナの人となりをドーリアン夫人を通して認識する。
「だろうな。」
 ヒイロは溜息と共にそう呟いた。
 そしてやおらジョーに言う。
「ジョー、この間同様おまえが夫人につけ。俺は標的を張らなければならない。」
「わかりました。チーフがいますがセキュリティは増やしますか。」
「それも通常通りに。」
 通常のセキュリティの勘定にいれるなと、あくまでこだわる。
 その時プールからリリーナが上がってくる。こちらを見たが、すぐに踵を返して、セツを伴いシャワールームに向かった。
 朝焼けがこちらを逆光にして、乏しい自分の表情を更に影にしてくれるので、なんだか薄情に思えた。







 翌日黒海。
 リリーナが壇上で演説していた。
 ヒイロはその様子を壇上の袖から見ている。
 端末のバイブレータが作動して、それを取り出し耳に当てた。
 五飛の声がした。
「<スナイパーの手下を捕まえた。>」
 動けない自分に変わっていろいろ調べてくれているのが奴だ。
 レディ・アン同様、よく動く。
 上の立場なのだからもう少し指示系統にいてもよさそうだが、どのみち解体されるべき組織にそんな序列は不要かとも思う。
「さすがと言いたいが、・・・・手下?。」
「<そうだ。手下としか言いようが無い。会場の排気ダクトに入るだろうと待ち伏せしてたらおあつらえむきやってきた奴だ>」
「なぜスナイパーの手先とわかる。」
「<スナイパーが狙っていたのが手下の方だ。おまえのいう角度を探ったらいた。この手下が失敗すればスナイパーが消すつもりだったようだ。>」
 聞いたヒイロの眼差しが険しいものに変わる。
「・・・・避けられたのか?。」
「<あたりまえだ。銃で先を歩かされた奴を殺されてたまるか。工作員でもな。>」
「・・・・・ああ。」
 今は安全な位置でこの通信を掛けているとのことだった。
「<ただ単独犯じゃないとなるとやっかいだ。>」
 同感だった。
「その手下は何か言っているのか?。」
「<なにも吐かん。ここにいるから何か言うか?>」
「・・・・・・。」
 どうせ俺みたいな奴なんだろうと思った。
「往生際が悪いと言ってくれ。俺はこのままスナイパーの警戒にあたる。」
 まだいる可能性は少ないが、警戒はしておいた方がいいだろう。
「それから出入国審査のチェックもしておく。これは押さえたい。」
「<頼む。>」
 そう言って通信を切った。
 それと同時に同じく壇上の袖にいたセツがつかつかとこちらにくる。彼女は目も良かったが耳も相当良かった。五飛との通信の音声など良く聞こえていたに違いない。
 ヒイロの目の前を通り過ぎ、袖にある放送設備を一つ借りれるように通信士に交渉してくれる。
「どうぞ。」
 明け渡された席を引いて勧める。
 ヒイロも手に持った端末を接続し、コンソールに収まる。
 セツは自分の手元と目の動きを見ていた。
「・・・・。」
 盗めるものなら盗んでもらおうと、鮮やかにハッキングをしてみせる。各地の出入国審査の情報をマルチ画面として呼び出した。
 レディ・アンのくれたディスクも機器に挿入する。その地続きの越境データと照合していく。


 凛とした声がホールに響いた。
「後の人のためにインフラを行います。」
 既得権の保護、排除両方をする。
 その上で火星を求めよと言う。
「コロニーを学ぶことで、地球の環境を安定させます。」 
「そして既得権に関しては、私と話をしてください。」
「不信任ならいつでも。信任投票は一年後」
「私に課せられているのは戦後処理です。でも同時に願うものでもあります。」
 リリーナは高らかに伝える。
 それは兄が求めてきたものでもあった。


「全ては、後の人のために。」











[09/9/25]
■読みにくくてすいません・・。でもなんか次々行きます。
漫画が書けたらいいんだけどね。

タイトルあんまり意味無いなー。
マレーシアはボルネオに行きました。マラッカはちょこっと。
朝から生ぬるい海風が吹いて気だるさを助長して、大好きです。

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