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プロローグ

6.ジブラルタル






 ジブラルタル海峡。
 欧州最果ての海に一艘の空母が横たわる。
 先の戦争で海岸から300m先で座礁し、そのまま放置されているのだ。
 テロリストの最終防衛基地。
 そして所詮自決するだけの基地だった。
 デュオは忍び込んで、火薬をしけらせ、信管を抜いていった。
 更にはソフトボールほどのプルトニウムなんてものも3個あったので、それも船から運び出してしまった。
 宇宙には放射能を防ぐためのスーツが開発されている。
 デュオは宇宙空間での生活が長いのでその手の危機管理は誰よりもよく知っていた。
 そのあとは、制圧を開始。
 既に被爆した少年達の応急処置を施し、抵抗する者達は拘束。
「やー素直、素直。ぜーったいおまえより可愛いもんだぜ」
「・・・・。」
 ヒイロは目下プルトニウムの起爆装置のプログラムにバグを送りつけている。その後には空母自体の操縦も不能にしていく作業をするつもりだった。
「おまえすっげー暗かったもんなー。」
「・・・・・。」
「この少年隊におまえみたいな暗ーい奴がいたらどうしようかと思ったぜ。今更巻き添え食って爆死なんてぜーったい嫌だしな。」
「・・・。」
 デュオは頭を掻いた。
「つーか。今おまえそういう状態なんだけど。・・・・・・・・・・・なー、お嬢さんとやったの?。おまえ、なんか暗いぜ?。」
「・・・・。」
 完全無視である。
 ヒイロがここジブラルタルに来たのは夕方だ。それからずっとこの調子だ。
 昨日の内に制圧は完了して、シェラネバタ解放に関する案件も今朝のうちにリリーナが解決してしまっていた。
 そのリリーナとガードの二人とヒイロでここジブラルタルに急遽入ったのである。
 もちろんリリーナの望みだったからだ。
「うーん。それは無いか。ここに来たいとか言い出すあたり、いつも通りだしな。」
 どうもよくわからない。まあこの二人、からかうにしても非難するにしても勝手に自分達で思いあっているので、無用の心配で、周りは馬に蹴られるだけなのだが。
「でも、つまんねぇ。絶対におまえ、コロニーにいる時の方がマシだって。」
 工作員にだろうと警備だろうと任務にすると徹底して戦前の奴に戻ってしまうようだった。嫌悪感は無い。奴らしいとは思う。感服もする。
 だけど淋しいから嫌なだけだ。こんなことならお嬢さんの警備なんか俺がするからいい。
「(お嬢さんだってその方がいいと思ってだろうなー。でも絶対に譲らねーんだろうけど)」
 ええいくそ、どこまでも暗い奴め。
 そこにトロワが操舵室に上がってきた。
「放っておけ。デュオ。それよりこっちに見てもらいたい配線がある。」
 操舵室に備品を置いてあるので、耐熱の手袋を交換する。
「えええーっ。またかよ。フェイク線ばっかりじゃねーか。この船」
 そう言ってデュオは操舵室を出て行った。
 ヒイロはむっつりとした無表情のまま。
 ただ操舵室にキーボードの音が響いた。





 ヒイロはひとしきり作業を終えて甲板に出た。ギターの音がした。振り向けば、リリーナたちがいた。リリーナは少年少女たちの取り巻く環境を見たがっていた。
 サンクキングダムで子女を集めた時のようには行かないだろうけれど、こうしてリリーナが行くことで戦う以外の道を模索するよすがにしたいと言う。
 空母の生活施設のバルコニー。風が当たらないため、ドラム缶に燃やされている機銃が暖房になって温かい。
 ヒイロは戸口に立ってしばらく見ていた。
 靴で甲板を打ち鳴らし、年のころ10歳前後の軍服を着た少女が踊っていた。
 ギターのアルペジオが響く。
 そしてカンテ。

  まるで大陸が二つに分かれたように
  その間に海があるように
  遠い場所にいた

 ジブラルタルは欧州とアフリカを分けた。アメリカとも隔てられている。
 だがそこで踊られるものはどことなく似ている。
 欧州の社交ダンスと違って一人で踊る。ラテン系の踊りは対にはなっても手を取らないことの方が多い。
 一個人の自由を主張する踊りだ。
「・・・。」
 リリーナは手拍子を打ち、時に歓声を上げていた。
 そして途中で立ち上がる。
 もうだいぶ見たのか、踊っている女の子の足元を真似ながらステップを刻む。
 少し大きな女の子が歩み出でて、こうだと教える。
 そこにやはり10歳前後の少年達が二人、甲板を靴底で打ち始める。
 ヒイロは踵を返した。

 ギターのアルペジオが響く。

  だけど今、こうしてまみえている。
  そしてそれが恋人。
  今夜限りでも恋人。





 ヒイロは甲板の後方にあるもう一つのドラム缶の傍に行った。
 そこには少年より上の、自分達よりも上くらい・・20歳くらいの連中が集まっていた。
 こちらもギターと歌が始まっていた。
 先程の少年少女のものよりしっとりとして、更にギターも歌も上手い。
 デュオは年長者らしい男と話をしている。
 唇を読めば、内容は今後のことについてアドバイスだった。談笑しながら説明している。
 対岸までの海が月齢16.4の月に照らされて波が揺らめいていた。さざ波も月光と同じくらい涼やかで心地よい。ギターの弦の音にとても合っていた。
 同じ気持ちなのか、トロワが甲板の手摺にもたれてギターに聞き入っていた。
 ヒイロはこちらに当然足を向ける。今はやかましいのを避けたい。
「トロワ。五飛は?」
「医療班を集めている。今日は無理だろうと連絡があった。まあ、具合が悪い者は運び出せた。」
 傷病人を自分達の乗ってきた高速船でピストン輸送した 
「本格的な輸送は、夜が明けてからだ。ちょうど潮が引く。体調のいい者は岸まで歩いて帰れる。」
 大潮をむかえていた。
 待つ宵の月が明るい。
「わかった。」
「おまえも少し休んだらいい。・・・飲むか?。」
 少し向こうに風除けを立てただけのコンロが燃えていた。
「もらう。」
 トロワは固形スープやドライフードで簡単なスープを作って振舞っていた。
 淡白で野菜の甘みのある柔らかい味だった。
 塩分の多い食事になってしまう環境にあった少年兵達にはこの味がいたく気に入っているようだった。
 受け取ったヒイロは傍の積みあがった材木の上に腰掛けた。
 トロワは隣に佇む。
「どうした?。地球は、居心地が悪いか?。」
「・・・・。」
 微笑を乗せて、やおらトロワはヒイロに尋ねる。
「そういうわけじゃない。」
 と、言うも、当たらずしも遠からずなのでヒイロは眉をしかめた。
「そうか。」
 それ以上はトロワは何も言わない。
 ギターを聴いていた。
 ヒイロはそちらを向かないが、相手がトロワなのでぼそっと呟いた。
「・・・・リリーナを好きだと思った、だけだ。」
 憮然とした呟きだ。
 トロワは表情を全く変えないで、それにしては不適当な受け答えする。
「笑っていいか?。」
「笑うな。」
 今更なのはわかっている。
 だけど強く思ってしまったのだ。
 戦前はその感情を拒否した。否定した。逃げた。
 戦後は愛しさに替えてきた。
 俺とリリーナの関係に必要ないとしていた。
 そうしてごまかしてきた感情なのに、ここ地球に来て利己的になってしまった。
「・・・伝えたことの無い感情だ。」
 さっさと伝えたらいいと思う。だが出来ない。そうして人を殺した自分には人を好きになる資格などないと思う。だがそれがまた今更で。
 リリーナはどうしてあんなにも俺を好きだといえるのだろう。
 事実、嘘もついた。優しくもしなかった。
 さよならを言ったのに。

 だが、俺が優しくしないで傷ついた彼女すら好きだった。

 返答が無い。
 トロワは肩を竦めた。その今更的なことに、よほど自己嫌悪に陥っているようだ。
「・・・なるほど、確かに、暗いな。」
 先程、デュオが言った台詞に大賛成する。
「おまえは他人に自分の感情を押し付けることをしないからな。」
 柔らかく笑い、
「だが、言ったら喜ぶと思うぞ。」
 いつものように優しく進言をした。
 その時だ。掛け声が上がった。
 デュオが真ん中に出たのだ。
 ここにいる連中は奴がこの基地を制圧したと知っている。
 何故なら奴がいちいちおしゃべりだからだ。
 物を言えない閉塞感に満ちていた少年軍団にはおそらく信じられなかっただろう。
 口と手が動く。
 手が早いから、口数も多い。
 自分からすればやかましいことこの上ない。
 だがそれが風穴だったらしい。
 デュオは輪の中に入り、ギターに合わせてステップを踏む。
 そのステップが早い調子に変わっていく。
 ギターが察して、足音を追いかけるようにかき鳴らされる。
 数人混ざる。デュオに負けまいとステップを刻みだす。
 デュオはアップテンポでしかもユーモラスに踊る。
 笑い声が上がった。ステップが続いていく。
「ほう。」
 トロワは感じ入ってよく見ている。
「うまいじゃないか。」
 ショー的で専門なのはトロワだ。だがダンスホールのような空間を作り上げることは鉄火面は自覚しているので不向きだ。キャスリンなら出来るだろうが。
「・・・・・。」
 やかましくなかったのにやかましくしやがったと、ヒイロは一瞥するだけで、スープを口に含む。
「おい、チーフ。」
 デュオの声が飛ぶ。自分に向けられているのは間違いない。
「・・・。」
 あいかわらず癇に障る。ちょっと前までうだうだ止まっていたくせに。
「おまえも踊れば。」
「・・相手がいなければ踊れない。」
「おまえは、またそーゆう我がままを。」
 デュオは完全にあきれ声だ。
「相手がいればいいんですね。」
 後ろから声がかかった。
 ヒイロの沈黙が輪をかけて静かになる。
 本当にどいつもこいつもだ。静かが当たり前の自分には、やかましい。
 だいたいなんで俺がこの空母まで付き合わなければならないんだとも思った。
 任務なら完了している。
 落ち込んであまり何も考えていなかったというのもわかっていて余計腹ただしさに拍車が掛かる。
 その原因の張本人のリリーナがヒイロに手を差し出した。
「よかったら踊ってください」
 その作戦的に可愛いリリーナを――やはり好きだと思った。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ああ。もっちろんOKだぜっ。」
 デュオが女の子達を混ぜる。。
 警笛のラッパが外されて、甲高い悲鳴のように鳴らされた。タンニングのみのだが見事な音階を作り、合奏に参入する。
 足を打ち鳴らされ、ドラム代わりだ。
 腕を組み合わないのに、どことなく情熱的なダンスなのは男のリードが必要なためだろう。デュオに誘われて女の子が入ってくる。数人のカップルが作られて一緒になって踊りの輪に入った。
「こんなもの踊ったこと無いぞ。」
 ヒイロが立ち上がった。
 リリーナの手を引く。少し痛いくらいに掴んだ。
 リリーナが軽く目を見張った。踊ったことが無いといいながら、強いリードだ。
 オープンポジションの手と立ち居地で対になる。
 ヒイロが早いステップを踏んだ。
 が、リリーナも踊りなれている。
 彼女のベージュのスーツの上着が艶やかに翻った。
 オーバーターン。
「・・・・。」
 何も知らないくせに、どうしてこう攻撃的なのかと思う。
 もう愛しいとは思わなかった。
 どうしようもなく好きだった。
 リリーナがしなだれついてくる。
 ヒイロのフォローに踊りの続きを託した。
 ターンの勢いのまま抱き上げられる形になり、リリーナはリフトするヒイロを試すようにステップの勢いのまま足をバタつかせ揺らす。
 ヒイロの足元は思いとはかけ離れて、一切ふらつかなかった。




 潮が引いていく、向こう岸では数台の輸送トラックが停まっている。
 トロワが進み出でた。


  出会う相手全て恋人よ。

 トロワが踊る。
 先程のステップに近い・・が腕の振りの伸びが違う。指の伸ばされ方が違う。

 ピエロ姿ならば道化じみて見えるのだろうか。
 それともピエロに恋してしまうのだろうか。

  私は道化。
  道化ならば全てを好きと言えるだろう。



 先程のメロディラインに似た、だがスローテンポだ。その曲に乗せるトロワの踊りに皆が目を奪われた。
 踊る足を止め、そして見、聞き惚れた。














[09/11/5]
■フラメンコにジルバに、ルンバ。あんまり名指しで文面に書くと詳細知らないのがばれるので。
 映画マスクのジルバがもう最高。
 フラメンコも大好き。
 ワルツはローマの休日の出だし、アン王女の踊り方が好きだーっ。


 Wにでてくる5機のガンダムの静止画像でユーチューブでカッコいいの見つけた。
 シェンロン・・かっこいい・・。
 いろいろ静止画像見ていて、格闘なら、ヒイロは下段から、五飛は上段から行きそうだな、とか思った。
 光ファイバー化していろいろ見やすいが、やはりTVAが見たい。が、見る暇が無い。
 Wのビデオみたいよー。せっかくDVDプレーヤー買ったのにっ。
 おうちの大きいインチのテレビで、大映像でみたいぞっ。


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